2008年2月17日 星期日

『中国茶事典』

事典


『中国茶事典』工藤佳治編(勉誠出版・7350円)

 われわれが中国の広大な文化を 知るには、何も難しい漢文を読むのが唯一の方法ではない。料理とか、菓子とか、酒とか、茶とか、具体的に味わい、楽しむことのできるものから始めるのも、 意味のある手段である。現在、中国茶に興味を持つ人が増えているのも、中国文化への探求心を満足させるからかもしれない。

 本書は、現代中国で生産されている茶の、主要な銘柄の100種をカラーで紹介し、味わいや水色を知ることができる。また名茶1400種を、茶名別、産地別、茶種別に掲載しており、多彩な中国茶の世界が、おのずと体系的に理解できる。

  茶を飲むという習慣は、中国に始まり、製茶技術も発展の一途をたどってきた。唐宋の固形茶から、やがて葉茶が発展し、蒸製から炒製へ、不発酵茶(緑茶)か ら発酵茶(ウーロン茶・紅茶)へと進化し、世界の喫茶文化に影響を与え続けてきた。茶を飲用する手段や、それに付随する茶文化も、文人文化の一部として、 発展変化を遂げてきた。われわれが日本の抹茶文化(茶の湯など)や、西欧の紅茶文化(アフタヌーンティーなど)を考える上にも、そのルーツとしての中国茶 文化を知る必要がある。

 現代の中国に限っても、茶は「国飲」として位置づけられ、技術の改良、茶樹の改良、新製品の開発、各地での品評会 や学会の開催、いずれをとっても、他の国には見られない勢いがある。日本では、ウーロン茶が「やせるお茶」としてブームとなって、それなりの定着をみせて いるが、実は中国茶の世界は、もっと深いもので、西欧におけるワインやチーズのような、深遠な世界が広がっているのである。

本書は、既成の書物の焼き直しでなく、杭州の中国国際茶文化研究会の協力により、日中双方の専門家の執筆を得て新たに完成したものであり、茶に関心を持つ人、また過去と現在の中国に関心を持つ人のいずれにとっても良い指針となるだろう。

(東京学芸大学教授 高橋忠彦)





『中国茶事典』『中国茶事典』


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